高輝度 LED で動画撮影用ライトを作ってみた Part 1/6: 準備編【DIY・電子工作】
どうも、ゼロ・インピーダンスの Kenn です。
今回は、動画撮影用のライトを作ってみようと思います。
ライティングは重要
YouTube に動画投稿しようと考えてから撮影方法とかについて色々と調べたんですが、ライティング(照明)がかなり重要らしいっていうことが分かりました。
照明については今回はじめて調べてくらいなので全然詳しくはないんですが、僕の部屋にある照明というと、天井にある蛍光灯 1 つだけです。
まあ、明るさ的には問題ないかもしれないんですが、上からの光だけだと目の下とか頬とかに陰ができて顔が暗く映ってしまうらしく、顔にできる陰を消すために、左右からライトで光を当てたりするらしいです。
他の YouTuber さんとかの撮影風景とかみていてもスタンド式の LED? 照明を使っているのをよく見ますし、実際、そういう専用の商品を Amazon とかでも普通に売ってます。
最初は「買おうかな」とも思ったんですが、工作系 YouTuber を目指しているので、せっかくなので自作したらいいんじゃないかと思い、作ってみることにしました。
一応、LED の点灯回路は過去に作ったことがあるので、「まぁ、なんとかなるんじゃないかな」という軽い気持ちでやってみようと思います。
ライトの仕様
2 台構成
顔の陰を消すために左右から光を当てるので、ライトは 2 台にしようと思います。
なんか『後ろにもライトをおくと後光が差しているようにみえる』という話もあったんですが、僕に後光が差しても何の意味もないと思うので、やっぱり 2 台でいいと思います。
明るさ調整機能
明るければいいというわけでもないと思うので、明るさを調整する機能をつけます。
調べたところ、『片側をちょっと暗くしたほうがいい』という話もあるようなので、ライト 1 台ごとに個別に明るさ調整できるようにしようと思います。
特に、今回のライトは顔の陰を消すのが主な目的なので、あまり明るい必要はないかもしれないです。
LED を使用する
ライトのパーツとして LED を使おうと思います。よくある砲弾型のものではなく、次のようなチップタイプの高輝度 LED を使います。
ほかに白熱灯や蛍光灯という選択肢もあると思うんですが、入手できるのは交流 \( 100\,\mathrm{V} \) 用の高圧のものなので、自作に使うのは難しいと思います。
特に、交流は明るさ調整が難しそうだし、蛍光灯に関しては明るさ調整自体が可能なのかどうかもよく分かってないです。
僕のスキルでは商用電源は扱えないので、\( 30\,\mathrm{V} \) 以下の直流でいきたいと思います。
LED なら直流の \( 3.3\,\mathrm{V} \) 程度で駆動できるし、PWM での明るさ調整もやったことがあるので、LED を使うことにしました。
AC アダプタから給電
電力をとる方法として、AC アダプタを使おうと思います。
以前作ったPC の電源を改造した安定化電源もあるんですが、あれは大電流となると \( 12\,\mathrm{V} \) までしたとれなくて、それだと LED を直列 3 コしかつけられないので効率が悪い可能性があると思いました。
ノート PC 用の AC アダプタで \( 18.5\,\mathrm{V} \), \( 4.9\,\mathrm{A} \) というものがちょうど転がっていて、これなら LED を 5 コ直列で点灯できるので、これを使おうと思います。
ちなみに、この AC アダプタはソケット部分が折れて使えなくなっていたので、一種のリサイクルです。
設計
大きくわけて 3 つのものを作っていこうと思います。
次の写真は既製品のものですが、この写真を使って説明します。
ライト部
ライト部は、LED を取り付けて実際に発光するメインの部分です。
LED には、次の図のような LED を 25 コ、合計で 50 コ使います。
この LED は高輝度タイプと呼ばれ、最大で \( 120\,\mathrm{mA} \) 程度まで流せるものです。
1 つあたりの消費電力が \( 0.4\,\mathrm{W} \) なので、ライトあたり \( 10\,\mathrm{W} \), 合計 \( 20\,\mathrm{W} \) になる予定です。
市販のライトだと、ライト 1 つあたり \( 15\,\mathrm{W} \) とか \( 20\,\mathrm{W} \) のものをありますが、顔の陰を消すのが目的なので、たぶん \( 10\,\mathrm{W} \) で十分だと思います。
スタンド部
スタンド部は、ライトを支えるもので、カメラでいう三脚の部分です。
高さを調節したり、角度を調節したりできるようにします。
コントロールパネル部
ライトの ON/OFF を切り替えたり、明るさを調整するためのスイッチ類をまとめた部分です。
これは既製品の写真にはないみたいですが、明るさ調整ができないはずはないので、ライト本体についているか、またはリモコンで調整できるようになっているんだと思います。
LED の放熱方法
「LED はあまり熱を出さない」というイメージがあったんですが、照明用ともなると、実はかなりの熱を出します。
ちょっと関係ない話なんですが、次の写真は動画を撮り始めるずっと前に作った『はんだづけ作業台』で、基板を見やすいように左右に LED を 1 つずつつけてます。
これが今回使おうとしている LED で、最大の \( 120\,\mathrm{mA} \) 付近を流してたんですが、あるとき指が LED にぶつかったときに、固定に使っていたグルーガンのグルーが指にべっとりついたんですよ。
つまり、LED の熱によってグルーが溶けかけていたということで、グルーが何度くらいから溶けはじめるかは知りませんが、もしかすると \( 70\,\mathrm{^\circ C} \) から \( 80\,\mathrm{^\circ C} \) くらいになっていた可能性もあったと思います。
LED のデータシートをみると、最大の定格温度は \( 85\,\mathrm{^\circ C} \) くらいなので、結構危なかったかもしれないです。
他の半導体素子は \( 125\,\mathrm{^\circ C} \) 以上たえられるものが多いことを考えると、LED は特に熱に弱いといえそうです。
その後、一応 \( 70\,\mathrm{mA} \) くらいまでなら特に放熱対策をしなくても平気そうだということは分かったのですが、今回みたいに照明を作るとなるとできれば最大付近まで電流を流したいので、何かしらの放熱対策が必要になりそうです。
放熱案
本格的に放熱するとなると、LED の裏側についている放熱板を銅板とかアルミ板にくっつけて、ファンで放熱するということになりそうな気がするんですが、ちょっと個人で作るには難しすぎる気がします。
そこで、手軽にできそうな放熱対策をいくつか考えて効果測定をしてみて、使えそうな方法があったら、それを採用しようと思います。
放熱対策なし
まず、放熱対策なしの測定をしてみようと思います。
「放熱対策なしではマズい」ということは既に分かっているんですが、他の案と比較するためにも、どのくらいマズいのかを測定しておこうと思います。
この方法では、LED の裏側をダンボールに直接くっつけます。
フローティング
次の方法はフローティングで、さっきは LED の背面をダンボールに直接くっつけたんですが、\( 5\,\mathrm{mm} \) くらい浮かせた状態にしようという案です。
熱が逃げやすくはなっていると思うので、多少の効果はあるんじゃないかと思います。
アルミホイル + 液体のり/グリス
最後は、アルミ板の代わりにアルミホイルを使う方法です。
放熱板は厚みがあるほうが一度に大量の熱を移動できると思うんですが、放熱という観点からは表面積のほうが重要な気もするので、意外とアルミホイルでも効果があるんじゃないかと思います。
あと、LED の放熱板とアルミホイルとをくっつける素材として『液体のり』と『グリス』を試してみます。
なぜ液体のりなのかというと、グリスって PC とかでもよく使うと思うんですが、「グリスって実際どのくらいの効果があるんだろう」と以前から疑問に思っていたので、この機会に試してみようと思ったからです。
効果測定方法
まず LED をセッティングして、LED の表面に NTC サーミスタというパーツをくっつけます。
サーミスタは、先端の黒い部分の温度が変化すると抵抗値が変化するパーツで、よく温度測定に使われます。普通はサーミスタと抵抗器で分圧した電圧を測定することが多いと思いますが、今回はテスタで抵抗値を測定・記録し、表計算シートで温度に換算します。
測定開始と同時に \( 120\,\mathrm{mA} \) を流し、15 秒おきにサーミスタの抵抗値を測定・記録し、表計算シートに打ち込みます。
これを最低 5 分間つづけますが、途中で \( 80\,\mathrm{^\circ C} \) を超えてくるようなら、LED が壊れる可能性があるので、その時点で測定を中止します。
以下、測定風景です。詳しくは動画を見てください。
↑ 放熱対策なし
↑ フローティング
↑ アルミホイル
↑ 測定中
測定結果
では、測定結果を発表します。
まず、『放熱対策なし』ですが、予想通り、最大定格温度をギリギリ超えるような感じになりました。
グラフの縦軸は『温度』ではなく『温度変化』なので、例えば温度変化が \( +55\,\mathrm{^\circ C} \) というのは『室温が \( 25\,\mathrm{^\circ C} \) のときに \( 80\,\mathrm{^\circ C} \) になる』ことを意味します。
ということで、やっぱり何らかの放熱対策が必要だということを、再確認できました。
次に『フローティング』ですが、『対策なし』よりは明らかに温度が低くなっていて、最大で \( +45\,\mathrm{^\circ C} \) 程度でした。
とはいえ、室温が \( 35\,\mathrm{^\circ C} \) のとき \( 80\,\mathrm{^\circ C} \) になるということなので、結構ギリギリだと思います。ちなみに僕が住んでいるのは岩手県の山奥ですが、それでも真夏には室温が \( 35\,\mathrm{^\circ C} \) 程度になることはよくあります。
最後に、アルミホイルを使った放熱ですが、液体のりとグリスの両方とも優秀で、両方とも \( +30\,\mathrm{^\circ C} \) 程度でおさまってます。室温が \( 40\,\mathrm{^\circ C} \) だったとしても余裕がある状態なので、実用的な放熱方法だと思います。
気になったのは、グリスよりも液体のりの方が放熱性能が高いように見えることで、液体のりはちょっと不安定な気はしますが、だいたいグリスより温度が低くなってます。
実は、グリスは意味なかった?
測定結果(つづき)
『翌朝』
実はあのあと思いついたことがあって、「液体のりって時間がたつと乾燥するのでは?」ということです。当たり前ではあるんですが、乾燥した後の放熱性能も検証してみないと「液体のりのほうが優れている」とはいえないと気づきました。
ということで、いま翌朝なんですが、昨日の夜からそのままにしてあるので、もう一度測定してみようと思います。
『対策なし』と『フローティング』は以前のままで、アルミ箔の 2 つだけ更新してます。
液体のりの放熱性能が急激に悪化しているのが分かりますね。昨日から \( 10\,\mathrm{^\circ C} \) くらい上がっていて、フローティングとあまり変わらないくらいになってます。
一方で、グリスのほうは昨日とほとんど変わっていないことが分かります。
やっぱり専用のグリスは性能が高いってことなんですね。ということで、アルミホイル + グリスで放熱しようと思います。
グリスさん、疑ってすいませんでした。
まとめ
では、今回はここまでにしようと思います。
LED の放熱対策は必須で、あとグリスはすごいってことが分かりましたね。
次回は、設計図を作るところからやっていこうと思います。
ここまで見てくれてありがとうございました。よかったら動画も見てください。
2019/09/01