高輝度 LED で動画撮影用ライトを作ってみた Part 5/6: 調光編【DIY・電子工作】

どうも、ゼロ・インピーダンスの Kenn です。

今回は、動画撮影用のライトを作製する動画の第 5 回です。以前の記事を見ていない人は、ぜひ初回からみてください。

今回は、前回言ったように LED の明るさ調整回路を作りますが、その前に、ちょっとした安全機能をつけようと思います。

逆接続保護機構

ライトへの電源ケーブルを間違ってプラス・マイナス逆に接続すると、定電流回路とか LED が壊れてしまう危険があるので、それを保護する機構を作ろうと思います。

というのは、実は動画外で実験をしていたときに、電源のプラスとマイナスを逆接続してしまって、定電流回路を 3 つとも全部壊してしまったということがあったんですよ(本当)。

「そんな単純なミスするわけないでしょ」って思うかもしれないですけど、僕も思ってましたからね。

ということで、ミスすることはあるということで、逆接続から回路を保護する仕組みを作ろうと思います。

プラグの逆接続防止機構

電源プラグを \( 18\,\mathrm{V} \), \( 1.25\,\mathrm{V} \), GND の 3 ピンにするつもりでしたが、そこにダミーの NC (未接続) をつけて、物理的に逆接続できなくする仕組みにしようと思います。

safe-connector.png

左から 2 番めのソケットに針金かなにかを詰めてピンが入らないようにして、プラグのほうも同じピンを折っておくことで、逆接続しようとするとピンと針金がぶつかって物理的に接続できないという仕組みです。

逆接続保護回路

コネクタ側での保護機構だけだと、テストとかでジャンパケーブルを直接差したときにミスする可能性があるので、回路的にも保護機構をつけようと思います。

回路図はこんな感じです。

schematic-2.png

仕組みを簡単にいうと、まず赤の線が LED への \( 18\,\mathrm{V} \), オレンジがモーターへの \( 1.25\,\mathrm{V} \), 青が GND で、通常は、赤から青に電気が流れているわけですが、この場合、真ん中にあるダイオードは逆方向なので電気は流れません。

そして逆接続してしまった場合、電気は青から赤に向かって流れるわけですが、このときダイオードは順方向になるので、こういう風に電気が流れます。

途中に抵抗体とかはないのでほとんどショート状態になって、大電流が流れて、入り口付近にあるヒューズが切れるという仕組みです。

電流のほとんどがダイオードを通るので、その先にある定電流回路とか LED は大丈夫なはず。

もちろんヒューズは切れるし、ダイオードもたぶん壊れますが、そうそう逆接続することはないし、仮にしてしまっても取り替えればいいだけなので、かなり簡単な設計にしてます。

通常時の電流量は多くても \( 700\,\mathrm{mA} \) 程度のはずなので、ヒューズは \( 1\,\mathrm{A} \) のものを使うことにします。

以下は、作製風景です。詳しくは動画を見てください。

video1-7.jpg

↑ 回路を実装します。

調光回路

では、いよいよ LED の明るさを調整する回路を作っていきます。

目標としては、\( 10\% \) から \( 90\% \) くらいの間で変化させられるようにしたいと思ってます。本当は \( 0\% \) から \( 100\% \) がいいわけですが、仕組み的に難しいので、ちょっと妥協してます。

明るさ調整の方法としては、定電流回路みたいにトランジスタで余分な電力を消費するやり方もありますが、かなり効率が悪いし、放熱の仕組みも別に作らないといけないと思うので、今回は PMW を使います。

PWM は、前回作ったスイッチング電源と仕組みが似ていて、電流をこまぎれのパルスにして、平均電流を小さくするというやり方です。無駄な電力があまり発生しなくて効率がいいので、LED の明るさ調整にはよく使われてると思います。

PWM の仕様

PWM の仕様としては、周波数を \( 1\,\mathrm{kHz} \) くらいにしようと考えてます。

スイッチング損失というロスがあるので、効率を考えると周波数は低いほどいいんですが、あまり低すぎると、チカチカ点灯しているのが見えてしまって、ライトとしてはちょっと使えなくなってきます。

前に個人的に試した感じだと \( 80\,\mathrm{Hz} \) あたりが境目だったんですが、人にもよるかもしれないですし、動画撮影用なのでもしかしたらカメラにはチカチカが映ってしまうかもしれないので、ちょっと高めにしました。

スイッチングのコントローラとしては、汎用タイマー IC の NE555 を使おうと思います。

スイッチング素子には、前回の DC-DC コンバータと同じく、N-ch MOS-FET の AO3401A を使います。

回路図

とりあえず回路図を作りました。

schematic-4.png

まず簡単に説明すると、真ん中にあるのが NE555 というタイマー IC で、その左側が発振のための回路、右側がスイッチング回路です。


ではまず、左側の発振回路ですが、\( R_3 \) という 3 つの端子は、\( 100\,\mathrm{k\Omega} \) の可変抵抗をあとから接続するための端子です。なので、ここには可変抵抗があると思ってください。

本来、NE555 で作った PWM 回路って 50% 以上の duty 比しか出せないんですが、ダイオードを互い違いに接続して、可変抵抗の両側を使うようにすることで、50% 未満の duty 比を出せるようにしてます。そこがちょっと違うだけで、後は NE555 を使った基本の無安定マルチバイブレータの回路と同じです。

ちょっと例をあげると、\( R_3 \) の右側が \( 100\,\mathrm{k\Omega} \), 左側が \( 0\,\mathrm{\Omega} \) とすると、充電のときには \( 111\,\mathrm{k\Omega} \) なので時間がかかりますが、放電のときには \( 1\,\mathrm{k\Omega} \) なので一瞬で放電できるという感じです。


次に、右側のスイッチング回路ですが、無駄を減らすために ON 抵抗の小さい MOS-FET を使ってます。

前回 DC-DC 電源で使った MC34063 の IC と違って、NE555 の出力は吐き出しと吸い込みの両方ができるので、実は MOS-FET のゲートを適当な抵抗器と一緒に直結することはできます。

そうすれば回路は単純になるのですが、残念ながらそう簡単にはいかなくて、制御したい電圧が \( 18\,\mathrm{V} \) と高いので、MOS-FET を完全に OFF にするには \( 18\,\mathrm{V} \) 付近の電圧が必要になります。

でも NE555 の出力は \( 5\,\mathrm{V} \) なので、まったく足りず、仕方がないので、トランジスタとかツェナーダイオードを使った制御回路にしてます。

ちなみに、NE555 はかなり広い電圧を入力できる IC なんですが、それでも \( 16\,\mathrm{V} \) くらいが最大なので、残念ながらダメでした。

あと、AO3401A のゲート電圧の定格は \( -12\,\mathrm{V} \) なので、そのまま GND に接続すると定格を超えてしまいます。

なので、\( 10\,\mathrm{V} \) のツェナーダイオードをつけて、最低でも \( 8\,\mathrm{V} \) を維持できるようにしてます。


簡単に動作を説明すると、NE555 の出力が H のときには、\( Q_2 \) が導通して、さらに \( Z_1 \) も導通するので、ゲート電圧は \( 18\,\mathrm{V} - 10\,\mathrm{V} = 8\,\mathrm{V} \) になって、D-S 間が導通します。

NE555 の出力が L のときには、\( Q_2 \) が導通しないので、プルアップ抵抗を通じてゲート容量が充電され、ゲート電圧は \( 18\,\mathrm{V} \) になって、D-S 間が導通しません。


ユニバーサル基板上のレイアウトはこんな感じです。

univ-layout-2.png

パーツ選定

パーツ型番定格
\( Q_1 \)AO3401A\( 18.5\,\mathrm{V}+ \), \( 700\,\mathrm{mA}+ \)
\( Q_2 \)BC337なんでも

使用するパーツですが、スイッチング素子には、さっきいったように、AO3401A という N-ch MOS-FET を使います。秋月とかだと、IRLML2246 が性能的に近いと思います。

\( Q_2 \) には BC337 というトランジスタを使いますが、ここは大して電流が流れるところではないので、何でもいいです。

定格計算: ON

では、定格計算をしていきます。

実際には発振回路側の計算もしてますが、まあ、発振側は微電流しか流れないので省略して、スイッチング側で NE555 の出力が H の場合です。

名前 定格 説明
名前 定格 説明
\(\boldsymbol{R_E}\)
\(\boldsymbol{V_{R_E}}\)\(\boldsymbol{4.30\,\mathrm{V}}\)\(\boldsymbol{R_E}\) の端子間電圧
\(\boldsymbol{I_{R_E}}\)\(\boldsymbol{4.30\,\mathrm{mA}}\)\(\boldsymbol{R_E}\) の電流
\(\boldsymbol{P_{R_E}}\)\(\boldsymbol{250\,\mathrm{mW}}\)\(\boldsymbol{18.5\,\mathrm{mW}}\)\(\boldsymbol{R_E}\) の消費電力
\(\boldsymbol{Q_2}\)
\(\boldsymbol{V_{CE2}}\)\(\boldsymbol{45.0\,\mathrm{V}}\)\(\boldsymbol{3.70\,\mathrm{V}}\)\(\boldsymbol{Q_2}\) C-E 間の端子間電圧
\(\boldsymbol{I_{C2}}\)\(\boldsymbol{800\,\mathrm{mA}}\)\(\boldsymbol{4.30\,\mathrm{mA}}\)\(\boldsymbol{Q_2}\) のコレクタ電流
\(\boldsymbol{P_{C2}}\)\(\boldsymbol{625\,\mathrm{mW}}\)\(\boldsymbol{15.9\,\mathrm{mW}}\)\(\boldsymbol{Q_2}\) の C-E 間の消費電力
\(\boldsymbol{I_{B2}}\)\(\boldsymbol{43.0\,\mathrm{\mu A}}\)\(\boldsymbol{Q_2}\) のベース電流
\(\boldsymbol{R_\mathrm{PU}}\)
\(\boldsymbol{V_{R_\mathrm{PU}}}\)\(\boldsymbol{10.0\,\mathrm{V}}\)\(\boldsymbol{R_\mathrm{PU}}\) の端子間電圧
\(\boldsymbol{I_{R_\mathrm{PU}}}\)\(\boldsymbol{2.13\,\mathrm{mA}}\)\(\boldsymbol{R_\mathrm{PU}}\) の電流
\(\boldsymbol{P_{R_\mathrm{PU}}}\)\(\boldsymbol{125\,\mathrm{mW}}\)\(\boldsymbol{21.3\,\mathrm{mW}}\)\(\boldsymbol{R_\mathrm{PU}}\) の消費電力
\(\boldsymbol{Z_1}\)
\(\boldsymbol{V_{Z_1}}\)\(\boldsymbol{10.0\,\mathrm{V}}\)\(\boldsymbol{Z_1}\) の端子間電圧
\(\boldsymbol{I_{Z_1}}\)\(\boldsymbol{2.17\,\mathrm{mA}}\)\(\boldsymbol{Z_1}\) の電流
\(\boldsymbol{P_{Z_1}}\)\(\boldsymbol{500\,\mathrm{mW}}\)\(\boldsymbol{21.7\,\mathrm{mW}}\)\(\boldsymbol{Z_1}\) の消費電力
\(\boldsymbol{Q_1}\)
\(\boldsymbol{I_{D1}}\)\(\boldsymbol{-3.2\,\mathrm{A}}\)\(\boldsymbol{-700\,\mathrm{mA}}\)\(\boldsymbol{Q_1}\) のドレイン電流
\(\boldsymbol{R_{DS \mathrm{(on)}}}\)\(\boldsymbol{40.0\,\mathrm{m\Omega}}\)\(\boldsymbol{Q_1}\) の ON 抵抗 (\(\boldsymbol{V_{GS} = -10\,\mathrm{V}}\))
\(\boldsymbol{P_{D1}}\)\(\boldsymbol{900\,\mathrm{mW}}\)\(\boldsymbol{19.6\,\mathrm{mW}}\)\(\boldsymbol{Q_1}\) の消費電力
\(\boldsymbol{\Delta T_{J(Q1)}}\)\(\boldsymbol{2.45\,\mathrm{{}^\circ C }}\)\(\boldsymbol{Q_1}\) の PN 接合の上昇温度
\(\boldsymbol{T_{J(Q1)}}\)\(\boldsymbol{150\,\mathrm{{}^\circ C }}\)\(\boldsymbol{42.5\,\mathrm{{}^\circ C }}\)\(\boldsymbol{Q_1}\) の PN 接合の温度
\(\boldsymbol{V_{GS1}}\)\(\boldsymbol{-12\,\mathrm{V}}\)\(\boldsymbol{-10\,\mathrm{V}}\)\(\boldsymbol{Q_1}\) の G-S 間電圧
放電速度
\(\boldsymbol{t_\mathrm{dis}}\)\(\boldsymbol{211\,\mathrm{ns}}\)放電時間 (\(\boldsymbol{-2.5\,\mathrm{V}}\) まで)
\(\boldsymbol{t_\mathrm{on}}\)\(\boldsymbol{217\,\mathrm{ns}}\)ON にかかる時間
\(\boldsymbol{t_\mathrm{dis(rate)}}\)\(\boldsymbol{1.00\,\mathrm{\%}}\)\(\boldsymbol{0.03\,\mathrm{\%}}\)発振周期に対する放電時間の割合
\(\boldsymbol{t_\mathrm{on(rate)}}\)\(\boldsymbol{1.00\,\mathrm{\%}}\)\(\boldsymbol{0.03\,\mathrm{\%}}\)発振周期に対する ON にかかる時間の割合
消費電力
\(\boldsymbol{P_\mathrm{acc}}\)\(\boldsymbol{77.4\,\mathrm{mW}}\)\(\boldsymbol{Q_1}\) 駆動回路の総消費電力

まず、エミッタ抵抗 \( R_E \) をみていきますが、ベース電圧が \( 5\,\mathrm{V} \) で、B-E 間はだいたい \( 0.7\,\mathrm{V} \) なので、\( R_E \) の端子間電圧はだいたい \( 4.7\,\mathrm{V} \) あたりで固定されます。

ということは、オームの法則で電流量は \( 4\,\mathrm{mA} \) くらいで、消費電力も大丈夫です。


次に \( Q_2 \) のトランジスタですが、C-E 間の電圧は \( 18\,\mathrm{V} - 10\,\mathrm{V} - 4.3\,\mathrm{V} = 3.7\,\mathrm{V} \) なので、定格を満たしてます。

電流はさっきみたように微弱なので、温度定格は省略します。


次にプルアップ抵抗は、端子間電圧が \( 10\,\mathrm{V} \) なので電流量は \( 2\,\mathrm{mA} \) 程度で定格以内です。


ツェナーダイオードも微弱電流なので省略します。


\( Q_1 \) の MOS-FET は、ドレイン電流は LED 1 列に流れる \( 120\,\mathrm{mA} \) が 5 つで \( 600\,\mathrm{mA} \), それに定電流回路とかで消費する電流を加味すると、だいたい \( 700\,\mathrm{mA} \) いかない程度でしょう。

ON 抵抗から消費電力を計算し、熱抵抗値から上昇温度を計算すると、\( 42.5\,\mathrm{^\circ C} \) 程度なので問題なしです。

あと、G-S 間電圧は \( -10\,\mathrm{V} \) ですが、定格は \( -12\,\mathrm{V} \) なので OK です。


最後に、MOS-FET が OFF → ON にかかる時間を計算してみると、ケートキャパシタンス・ゲート抵抗などから、\( 200\,\mathrm{ns} \) 程度だと分かります。

これはスイッチングの周期に対して 0.03% 程度なので、まったく問題はないです。


ちなみに NE555 の出力が OFF の場合も計算しているのですが、プルアップ抵抗を通じて微弱電流でゲートが充電されるだけなので、省略します。

実装・テスト

以下は、作製風景です。詳しくは動画を見てください。

video1-8.jpg

↑ パーツをはんだづけします。

video2-7.jpg

↑ 半固定抵抗を回すと出力電圧が変化することを確認します。

video4-4.jpg
video5-2.jpg

↑ ライトに接続して調光ができることを確認します。

まとめ

はい、では今回はここまでにしようと思います。

次回は調光回路のための \( 5\,\mathrm{V} \) 電源の作製からやっていこうと思います。

たぶん、次回が最終回になると思います。

では、ここまで見てくれてありがどうございました。よかったら動画もみてください。

      2019/09/25

 - 電子工作