MC34063 を使ってスイッチング定電流回路を作ってみる Part 2/4 設計編【電子工作・実験】

注意: この実験は最終的に失敗します。いろいろ勉強できることが多かったので記事として投稿しますが、参考にする場合には注意してください。

どうも、ゼロ・インピーダンスの Kenn です。

今回は、MC34063 を使ったスイッチング定電流回路の実験動画の第 2 回です。第 1 回を見ていないのであれば、ぜひ最初から見てください。

今回は、スイッチング式定電流回路の設計をやっていきます。

仕様

項目
入力電圧\( 5\,\mathrm{V} \)
出力電圧\( 3.48\,\mathrm{V} \)
最大出力電流\( 18\,\mathrm{mA} \)

では、定電流回路の仕様を決めていきます。

電源電圧は \( 5\,\mathrm{V} \) にします。

実際には、もっと高い電圧、例えば \( 12\,\mathrm{V} \) とか \( 18\,\mathrm{V} \) を使うことが多いと思うんですが、扱いやすい電圧でやります。


出力電圧は、LED の \( 3.3\,\mathrm{V} \) に、電流検出抵抗の分を上乗せして \( 3.48\,\mathrm{V} \) にします。

LED は 1 つだけ、定格 \( 20\,\mathrm{mA} \)\( 3\,\mathrm{mm} \) 砲弾型 LED を使って、\( 18\,\mathrm{mA} \) 流すつもりです。

これも、実際には \( 60\,\mathrm{mA} \) とか \( 120\,\mathrm{mA} \) の高輝度タイプの LED を 3 コとか 5 コとか直列にすることが多いと思います。

最初は、\( 120\,\mathrm{mA} \) の高輝度 LED を使って実験しようと考えていたんですが、そうすると電流検出抵抗を \( 1\,\mathrm{\Omega} \) にしないとだめなんですよ。

ブレッドボード上で回路を組もうと思ってるんですが、接触抵抗とかで簡単に \( 1\,\mathrm{\Omega} \) とか \( 2\,\mathrm{\Omega} \) になっちゃうので、さすがに無理があると思って、やめました。


という感じで、実際とはだいぶ違う構成で実験しますが、あくまで「MC34063 を使ったスイッチング回路で定電流制御ができるか?」を確かめることが目的なので、問題はないと思います。

実現可能だということが分かれば、電圧をあげたり、電流を増やしたり、LED の個数を増やしても、ちゃんと動作するはず。

回路イメージ

ちょっと簡単に、回路のイメージを説明しようと思うんですが、これは本当の回路図ではなくて、だいぶ簡略化したイメージ図です。

diagram.png

まず、右上に LED があって、\( 18\,\mathrm{mA} \) を流したいとします。

大きく分けて、電流を細切れのパルスにする部分が左上です。

スイッチング素子は MC34063 の中にも入っているんですが、効率が悪く、あまり大電流を流せないということもあって、実際には MOS-FET を外付けして使うことが多いかなと思います。

今回の実験では内蔵の素子を使っても余裕なんですが、一応、実際の回路に近づけるために P-ch MOS-FET を使います。


次に、細切れにした電流を均して降圧するのが、まんなかあたりです。

そして電流検出抵抗 \( R_S \) の端子間電圧を 7 倍に増幅して、MC34063 にフィードバック入力する部分が下のあたりです。

『なぜ端子間電圧を 7 倍するか?』

それは MC34063 は \( 1.25\,\mathrm{V} \) を基準に制御するからです。

今回の実験では \( 18\,\mathrm{mA} \) 流すので、\( R_S \) の端子間電圧は \( 0.18\,\mathrm{V} \) になって、それを 7 倍するとだいたい \( 1.25\,\mathrm{V} \) になるということです。

あとは MC34063 がフィードバック入力が \( 1.25\,\mathrm{V} \) になるように、MOS-FET をうまいこと制御してくれます。

パラメータ計算

次に、さっき決めた仕様から、MC34063 の各種パラメータを求めます。

計算式はデータシートに載ってますが、項目が結構多くて、毎回計算するのが大変なので、表計算シートを作って自動計算するようにしてます。

その結果、こうなりました。

mc34063-params.png
diagram.png

まず \( V_\mathrm{sat} \), 飽和電圧。

今回は MOS-FET を使うので、飽和電圧ではなくて、ON 抵抗と電流量から求めた D-S 間の端子間電圧を使います。

MOS-FET は ON 抵抗が小さいので \( 0.1\,\mathrm{V} \) 以下になります。

\( V_F \) はダイオードの順方向電圧で、今回は 1N5819 を使おうと思うので、データシートのグラフから端子間電圧を読み取って入力しました。


入力電圧 \( V_\mathrm{IN} \) ですが、今回はきっちり \( 5\,\mathrm{V} \) を入力するので、最小値・最大値・典型値ともに \( 5\,\mathrm{V} \) としてます。

出力電圧は LED の \( 3.3\,\mathrm{V} \) に、\( 10\,\mathrm{\Omega} \) の電流検出抵抗にかかる端子間電圧 \( 0.18\,\mathrm{V} \) をたした値にしてます。

出力電流は \( 18\,\mathrm{mA} \)

スイッチング周波数はキリの悪い数値になってますが、タイミングキャパシタ \( C_T \) をキリのいい数値にするためです。

出力リップル電圧もキリが悪いですが、\( C_O \) をキリのいい数値にするために、わざと設定してます。


結果、パラメータはこんな感じになりました。

周期が \( 15.89\,\mathrm{\mu s} \), ON が \( 11.75\,\mathrm{\mu s} \), OFF が \( 4.14\,\mathrm{\mu s} \) なので、duty 比は 74% です。

タイミングキャパシタ \( C_T \)\( 470\,\mathrm{pF} \), 平滑化のためのキャパシタ \( C_O \)\( 100\,\mathrm{\mu F} \), インダクタンスは \( 463\,\mathrm{\mu H} \) になりました。

あと、スイッチング素子に流れる最大電流は \( 36\,\mathrm{mA} \) で、過電流保護回路を働かせるための過電流検出抵抗の抵抗値は \( 8.33\,\mathrm{\Omega} \) です。

回路設計

回路図を作ってみました。

schematic-1.png

まず、右上が \( 5\,\mathrm{V} \) の入力電源、ちょっと左下にいったところに MC34063 があって、全体の左下に LED があります。

大まかにいうと、青色のあたりがスイッチング部で、オレンジ色が平滑化する部分、緑色がフィードバックの部分です。


まず、\( R_\mathrm{SC} \) は過電流検出抵抗で、本来は \( 8.33\,\mathrm{\Omega} \) が必要なんですが、そんなキリの悪い抵抗器はないので、\( 5\,\mathrm{\Omega} \) にしてます。

計算した値より大きいと電流が流れなくなるのでダメですが、小さい分には、動きます。

今回は、もともとの電流が少ないので、抵抗値を多少小さくしても、過電流で問題になることはないです。


\( C_T \) がタイミングキャパシタで、MC34063 の発振周期を指定するキャパシタです。

\( Q_1 \) がスイッチング素子で、今回は AO3401A という表面実装タイプの P-ch MOS-FET を使います。


平滑部に移って、ダイオードは 1N5819 というショットキバリアダイオードを使います。

  • 逆流を防止できれば小信号用何でもいいんですが、順方向電圧が少ない方が効率がいいので、普通はショットキバリアダイオードを使うと思います。

インダクタは \( 470\,\mathrm{\mu H} \) のマイクロインダクタを使います。

平滑化のキャパシタ \( C_O \)\( 100\,\mathrm{\mu H} \) です。


そして、LED の前に最大 \( 100\,\mathrm{\Omega} \) の半固定抵抗 \( R_\mathrm{LMT} \) をつけてます。

もし定電流回路が働かず、電源の \( 5\,\mathrm{V} \) がそのまま LED にかかってしまった場合に、LED が燃えないようにするために、一時的にいれてます。

ちょっと試してみて大丈夫そうだったら、この抵抗器は取り外します。

LED は \( 3\,\mathrm{mm} \) 砲弾型です。見やすいかなと思って、青色にしました。


電流検出抵抗があって、そこから 7 倍増幅器のオペアンプ LM358 のプラス入力端子につなげます。

オペアンプの出力を \( R_1 \)\( R_2 \) で分圧してマイナス入力端子に入力し、倍率を設定します。

そして、そのまま MC34063 のフィードバック入力端子につなげます。


最後に、スイッチング部のちょっと複雑な部分についてですが、ここは MOS-FET を ON/OFF させるためだけの回路です。

MC34063 は普通のトランジスタをつけることを想定しているので、MOS-FET をそのままつけただけだと動きません。なので、MOS-FET のゲートを充放電するために、いろいろ置いています。

動作を簡単に説明すると、MC34063 の SWC が導通していないとき、つまりハイインピーダンス状態のときには、\( Q_2 \) を通ってゲートが充電されます。

SWC が導通すると、SWC と SWE が内部で GND につながるので、\( D_\mathrm{gd} \) を通ってゲートが放電される仕組みです。

ちなみに、\( R_\mathrm{PU} \) はプルアップ抵抗で、電源を入れてないときに、MOS-FET のソースとゲートを同電位にしておくためのものです。


じゃあ、こんな感じで回路図の説明は終わりです。

ブレッドボードのレイアウトはこんな感じにしました。

breadboard.png

ブレッドボードを 2 枚使って、左にスイッチング部と平滑部、右に LED とフィードバック部を配置しました。

パーツ選定

パーツ名用途型番
\( Q_1 \)スイッチングAO3401A
(IRLML2246)
\( D_1 \)平滑化1N5819
\( L_1 \)平滑化AL0307 \( 470\,\mathrm{\mu H} \)
\( U_2 \)7 倍増幅器LM358

では、回路に使うパーツを選んでいきます。

まず \( Q_1 \). スイッチングするためのメインのパーツですね。

これには P-ch MOS-FET の AO3401A というものを使います。

これは中国通販サイトの AliExpress で 100 コ入って 150 円ぐらいの値段で売られてたので衝動買いしたものなんですが、後から調べると、全然知名度がないんですね。

性能的にはむしろ優れてるんだけど、ブログの記事とかまったくヒットしないくらいマイナーだった……。

秋月とかで簡単に購入できるものとしては、IRLML2246 あたりが性能的に近いと思います。


次に平滑化に使うダイオード \( D_2 \) ですが、これは前もいいましたが、ここは性能に直結する部分なので、順方向電圧が低い 1N5819 というショットキバリアダイオードを使います。

そして、同じく平滑化に使うインダクタ \( L_1 \) には、AL0307 というタイプのマイクロインダクタを使います。

インダクタンスは \( 470\,\mathrm{\mu H} \) です。


そして、電流検出抵抗の端子間電圧を 7 倍に増幅するためのアンプとして LM358 を使います。

めちゃくちゃ安くて知名度が高いオペアンプですが、今回の用途では十分だと思います。

さいごに

はい、では今回はここまでにしようと思います。

次回は、回路を試作して、実験をするところからやっていきます。

ここまで見てくれてありがとうございました。よかったら動画もみてください。

      2019/10/23

 - 電子工作