PC 電源からスマホを充電したい(USB 充電アダプタ)【電子工作】
はい、今回も始まりました電子工作 実況風 動画
『PC の電源からスマホを充電するための充電ポートを自作してみる』
ゼロ・インピーダンスの Kenn がお送りします。
ATX 電源からスマホを充電したい
以前、ATX 電源(つまり PC の電源)を改造して実験用の電源を作ったんですが、この電源に USB 端子をつけたいと前から思ってました。
そうすると、スマホの充電だけでなく、モバイルバッテリーの充電とか、Raspberry Pi のような超小型 PC の電源にも使えていろいろと便利なはずです。
USB ソケットをつなげるだけでいい?
全体的なイメージはこんな感じで、
左から、まず ATX 電源。これは以前作ったものです。
電源の出力端子から \( 5\,\mathrm{V} \) を充電ソケットに接続して、ソケットとスマホを USB の充電用ケーブルでつないで充電するという感じです。
今回作るのは『充電ソケット』の部分です。
単に接続するだけでいいはず
USB の電源は \( 5\,\mathrm{V} \) なんですが、実は ATX 電源はもともと \( 5\,\mathrm{V} \) の出力を持ってるので、単に \( 5\,\mathrm{V} \) 出力を USB ソケットに接続するだけでいいはずで、結構簡単にできると思います。
今回は最大 \( 1.5\,\mathrm{A} \) の出力を出せるようにしたいと思ってます。
電源自体は \( 6.7\,\mathrm{A} \) まで出せるので余裕なんですが、出力をとるのに使っているピンソケットの最大電流が \( 3\,\mathrm{A} \) なので、充電ポート 2 つにしようと思います。
1 ポートで \( 1.5\,\mathrm{A} \), 2 つで \( 3\,\mathrm{A} \) ということです。
USB 充電の仕組み
USB の接続について調べたところ、普通に PC とつなぐときと、充電器とつなぐときの接続方法は違うみたいで、いくつかの接続方法があるらしいです。
"Battery Charging Specification Rev 1.2" という公式の資料をみたんですが、それによると、主な充電方式として SDP, DCP, CDP の 3 つがあるらしいです。
本当は、メーカーの独自仕様のものとかを含めるともっとあるんですが、公式で有名なものとしてはこの 3 つです。
種類 | 最大電流 | 用途 |
---|---|---|
SDP | \( 0.5\,\mathrm{A} \) | データ転送 |
DCP | \( 1.5\,\mathrm{A} \) | 充電のみ |
CDP | \( 1.5\,\mathrm{A} \) | データ転送と充電 |
SDP は PC とかとつなぐときに使われるもので、データ転送用なので、最大電流は \( 0.5\,\mathrm{A} \) と少ない。
DCP は充電専用の接続方法で、データ転送はできないけど、最大 \( 1.5\,\mathrm{A} \) で充電できます。
CDP は、データ転送と充電の両方ができるもので、やっぱり最大 \( 1.5\,\mathrm{A} \) で充電できます。
今回はデータ転送はしないので、DCP を使おうと思います。
DCP の仕組み
DCP の仕様としては、データ転送がいらないので、仕組みがかなり単純です。
これは資料にあった接続図なんですが、
左側の四角がスマホで、右側が充電器側で、USB ケーブルの中には 4 本のケーブルが入っているんですが、そのうち D+ と D- というデータ転送用のケーブルを使って、DCP かどうかの判定をします。
具体的には、\( R_\mathrm{DCP\_DAT} \) という抵抗器を使って D+ と D- をつなげます。
スマホ側は \( R_\mathrm{DCP\_DAT} \) の端子間電圧を測定して、DCP かどうかを判定します。
この図には \( R_\mathrm{DCP\_DAT} \) としか書いてなくて、何 \( \mathrm{\Omega} \) なのかが書かれてないんですが、なぜか仕様書の最後のほうにまとめて書かれてて、こんな感じになってます。
\( R_\mathrm{DCP\_DAT} \) は最大で \( 200\,\mathrm{\Omega} \) と書いてます。
でも、最小値が書いてないですよね。
これって、『\( 200\,\mathrm{\Omega} \) 以下だったら何でもいい』という意味だと思うんですよ。極端な話、\( 0\,\mathrm{\Omega} \) でもいいわけで、つまりショートでもいいのではないかと。
実際、『ショートでいい』と書かれているブログとかサイトも結構ありました。
最初は「念のため百数十 \( \Omega \) を入れとこう」と思っていたのですが、ちょうどいい抵抗器がないことに気づいたので、ちょっと冒険して、ここはショートでいきます。
パーツ選定
使用するパーツですが、USB のソケットは、『10 コで 67 円』というやつを AliExpress から買っておいたので、それを使います。
ケースには、いつもだったらダンボールを使うんですが、今回はだいぶ小型なので、中身がすかすかのダンボールだと強度が弱くなってしまうと思ったので、食品トレイに使われてる発泡スチロールを使ってみます。
\( 4\,\mathrm{mm} \) の厚みがあるものだったので、そこそこの強度を出せるんじゃないかと思います。
設計
こんな感じに設計しました。
配線
配線は、こういう風にしようと思います。
上のピンは ATX 電源に接続するコネクタで、今回は \( 5\,\mathrm{V} \) しか使わないので、こういう風につなぎます。
D+ と D- はショートさせておきます。
あと、USB ソケットにはこんな感じに 4 本のピンが垂直に出てるんですが、これを下図の右側のように曲げます。
やり方としては下の図を見てほしいんですが、左下の図がピンを真上から見た図です。
これを、手前に倒すように曲げて、真ん中の 2 本を中心に寄せるように曲げます。
作製・テスト
以下、作業風景です。詳しくは動画をみてください。
↑ 発泡スチロールからパーツを作製しました。
↑ USB ソケットのピンを曲げます。
↑ USB ソケットの不要なピンを切除します。
↑ ケースを組み立てます。
↑ 配線をします。
配線ミス 発覚!?
実は、配線をしおわってから気づいたんですが、プラスとマイナスをすべて間違って配線してしまいました。
なんでそんなミスをしたかというと、一応理由はあって、実は最初 USB ソケットをいまと上下逆につける予定でした。
下図でいうとひっくり返した状態でつけるつもりだったんですが、実際に組み立てようとしたら、真ん中の白い部分がちょっとでっぱってて、ぐらぐらしてバランスが悪かったんですよ。
試しに上下逆に置いてみたら安定したので「こっちのほうがいいな」って思って、その場で設計変更して上下逆にしたんですが、当然配線のプラスとマイナスも逆になるんですが、それを忘れて、以前の設計のままで配線してしまいました。
気づいたときには配線が終わってて、すべてプラスとマイナスが逆になってたという話です。
ちなみに、この記事に載せている配線図は修正後のものなので、そのまま配線して問題ないです。
これからどうするかですが、完璧を求めるならば、配線をぜんぶやり直したいところなんですが、グルーガンでくっつけてしまったので、無理に外すとケースが壊れる可能性があって、配線どころかケース作りからやり直さないといけないかもしれないので、さすがにそれはやりたくないんですよ。
僕しか使わないものなので、多少の設計ミスには目をつぶるとして、コネクタの配線を逆にして、赤のケーブルが GND, 黒のケーブルが \( 5\,\mathrm{V} \) という風にしようかなと思います。
これだとケーブルの色と電圧が合ってないですけど、修正は楽だし、見た目だけの問題なので、許容できるかなと思います。
作製・テスト
以下、作製・テストの風景です。詳しくは動画をみてください。
↑ 間違った配線を修正しました。
↑ ATX 電源につなぎ出力電圧を確認しました。
↑ 実際にスマホをつなぎ、充電されることを確認しました。
↑ ケースを完成させます。
↑ スマホ 2 台同時に充電させてみました。
(カメラ用のスマホをテストに使っているので、古いカメラで撮影してます。なので画質が悪い……)
まとめ
はい、うまくいきました。
配線するだけで作れるだろうと事前に思ってましたが、予想通り、結構簡単にできましたね。
D+ と D- はやっぱりショートでいいみたいです。
あと、ケースを発泡スチロールで作ることに実は不安があったんですが、ちょっと力をいれたくらいではビクともしなくて、思った以上の強度がありました。小さなケースを作る場合に発泡スチロールを使うのは悪くない方法だと思います。
さいごに
はい、ちょうどお時間がきたようです。
今回作製した設計図とかは GitHub にアップロードしてますので、もし作ってみたいという人がいれば、参考にしてください。
では、ここまで見てくださった方、本当にありがとうございました。よかったら動画もみてください。
Twitter もやっているので、フォローもどうぞ。
では、また別の動画でお会いしましょう。
ゼロ・インピーダンスの Kenn がお送りしました。
2020/02/13