テスターで USB 機器の消費電流を測定するアダプタを作ってみた【電子工作】

どうも、ゼロ・インピーダンスの Kenn です。

今回は、USB の電流測定をするためのアダプタを作製しようと思います。

目的・動機

USB 接続をしたときに、「どのくらいの電流が流れているか?」を調べたいことが時々あります。前回、ATX 電源からスマホを充電するためのアダプタを作ったときとか、100 均で売られている USB ガジェットのテストをするときとか。

USB のコネクタ間に接続するタイプの電流計は普通に Amazon とかでも売られてるんですが、なんか、買ったら負けな気がするんですよね。

amazon.png

というのは、電子工作をやってる人って、もれなくテスターを持ってるわけじゃないですか。「テスターを既に持っているのに、USB 接続の電流計を買うのは。どうなんだろう?」と思っちゃって買えない。

しかも、たぶんテスターのほうが測定精度が高いと思うし。

multimeter-probes.jpg

そうはいっても、普通のテスターで USB の電流を測定するのは難しそうなわけです。なんとかして、USB コネクタにプローブを接続しないといけないけど、どうすればいいの?

ということで、テスターを使って USB 接続のテバイスの電流を測定するためのアダプタ的なものを作ってみようと思います。

仕様

今回作るアダプタの使用イメージは、こんな感じです。

image/svg+xml ←デバイス USB ケーブル 電源→ 電流計

真ん中にいるオレンジの部分が今回作製するアダプタ。右側に電源があって、左側にスマホとかのデバイスが接続されてるイメージです。

赤線が \( 5\,\mathrm{V} \), 青線が GND, 黒がデータ通信に使う D+, D- です。

通常サイズの Type-A をサポート

電源側に USB プラグ(オス)、デバイス側に USB ソケット(メス)をつけるんだけど、両方とも通常サイズの Type-A にしよう。

usb-connector-geometry.png

下手に Micro とか Type-C とかにしちゃうと、相互変換がかえって大変になりそう。

なんだかんだいって、通常サイズの Type-A だと、どんなケースにも使えると思う。

電流と電圧を測定できるようにする

電流測定はいうまでもないとして、一応、電圧測定もできるようにします。

電圧は測定できなくてもいいような気はするけど、せっかく作るんだから、電圧測定機能もつけよう。市販品は電流と電圧両方測定できるから、負けるわけにはいかないし。

インタフェースとしては、ピンソケットをつけて、テスタの端子を差し込んで測定する感じ。

pin-header-female.jpg

ただ、テスターの普通のプローブだと先端がピンソケットに入らないので、こんな感じに、ジャンパケーブル的なものをつけるように改造しておく必要があります。

multimeter-probes.jpg

電流測定モードの ON/OFF 切り替え

テスターで大電流を測定する場合、長時間測定しつづけるとテスターが壊れる可能性があるらしい。

だから、短時間だけ測定したいんだけど、

  1. USB ケーブルを抜く。
  2. 電流計を直列に入れる。
  3. USB ケーブルを差し込む。
  4. 電流測定。
  5. USB ケーブルを抜く。

みたいにはしたくない。

LED とかモーターみたいな単純な回路であればこれでも問題ないけど、マイコンとか Raspberry Pi のようなデジタル回路の場合、USB ケーブルを抜いた時点でリセットされてしまうから、特定のタイミングでの電流を測定することができなくなってしまう。

なので、こんな感じにしたいわけです。

  1. 電流計を直列に入れておく。
  2. 電流測定モードを OFF にする。
  3. 電源を入れて動作させる。
  4. 電流測定したいタイミングになったら、電流測定モードを ON にして測定。
  5. 測定が終わったら、電流測定モードを OFF にする。

これなら、電源を切らずに、途中の短時間だけ電流測定ができるはず。

ということで、次のような配線にしてます。

image/svg+xml ←デバイス USB ケーブル 電源→ 電流計

赤線を途中で切断してピンソケット(右下にある灰色の長方形)に接続します。そこに電流計をつなぐげば、電源ラインと直列に入れることになる。

左下のスライドスイッチを左にした場合、ピンクの線がショート状態になるので、電流はピンクのラインを通って流れることになります。なので、電流計には(ほとんど)電流が流れないはず。

スライドスイッチを右にすると、ピンクの線が断線するので、赤の線を通って電流が流れる。つまり、電流計で電流を測定できる状態になるという仕組みです。

設計

配線は、こんな感じにします。 

diagram.png

向きはさっきの図と同じで、電源側が右、デバイス側が左。

左下にある端子は電圧測定端子で、赤と青の線と並列につなぎます。

電流測定端子とスライドスイッチについては、さっき説明したので省略。

パーツ選定

ケースには発泡スチロール

アダプタのケースには \( 4\,\mathrm{mm} \) 厚の発泡スチロールを使います。

以前、ATX 電源からスマホ充電するアタプタを作製したときにも発泡スチロールを使ったので、小物であれば十分な強度を確保できることは確認済み。

USB コネクタ

USB のコネクタ(プラグ・ソケット)には、こういう市販品をパーツを使います。

usb-connectors.jpg

右のプラグには黒いパーツが 1 組ついてるけど、今回は真ん中の金属のパーツだけ使います。

ali-usb-socket.jpgali-usb-plug.jpg

ちなみに、両方とも AliExpress で購入したもので、上の画像は 10 コでの値段です。ソケットのほうはかなり安い。

測定端子にはピンソケット

電流と電圧の測定用端子には、次のようなピンソケットを使います。

pin-header-female.jpg

このままだと長すぎるから、熱したカッターで必要な分だけ切り出すつもり。

作製

以下、作製風景です。詳しくは動画を見てください。

video1.jpg

↑ 型紙を印刷して、パーツを作る。

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↑ 端子類に予備はんだをしておく。

video3.jpg

↑ パーツを組み立てる。

video4.jpg

↑ 配線

テスト

以下、テスト風景です。詳しくは動画を見てください。

video1-1.jpg

↑ 端子類の接続確認

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↑ スマホと接続すると、普通に充電できた。

video3-1.jpg

↑ 電流測定モードにすると、充電電流を測定できた。

video4-1.jpg

↑ 電圧も測定できた。

video5.jpg

↑ ケースを組み立てる。

まとめ

USB 電源のスイッチとしても使えそう

短時間だけ電流測定するためにスライドスイッチをつけたんだけど、考えてみると、電流計をつけずに電流測定モードにすると単に断線するだけなので、USB 電源のスイッチとしても使えるかも。

USB ガジェットのテストとかで頻繁に電源を ON/OFF したい場合、いちいち USB ケーブルを抜き差しするのは面倒だけど、今回のアダプタを電流計なしで接続すれば、スライドスイッチで ON/OFF できるから楽かも。

データ通信も一応できそう?

データ通信用のケーブル (D+, D-) も接続してるから、一応データ通信もできるとは思う。

スマホをつないでデータ通信できることは確認したけど、どんなデバイスでも通信できるかは不明。ノイズ対策は一切してないから、環境によってはうまくいかないかも。

既製品より高精度の測定

テスターはレンジ切り替えがあるから、既製品の USB テスターより高い精度で計測できそう。

そんな高精度で USB ガジェットの電流を測定する必要があるかは知らないけど、精度がいいに越したことはない。

オシロスコープもつなげる

電流測定用のプローブにつけかえないといけないけど、オシロスコープにもつなげるはずなので、時間ごとの変化を測定することもできそう。

まあ、オシロスコープを持ってないですけど。

さいごに

はい、今回はここまでです。

今回作製した設計図とかは GitHub にアップロードしてますので、もし作ってみたいという人がいれば、参考にしてください。

では、ここまで見てくださった方、本当にありがとうございました。

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ゼロ・インピーダンスの Kenn でした。

      2020/04/19

 - 電子工作